2015-04-25

東京・青梅で江戸時代から続くテキスタイルに出会う旅

2/26〜3/1に開催されていた、「おうめ織めぐり体験ツアー」にモニターとして参加しました。
各日の定員は20人でしたが、倍率は5倍だったそうです。そんななか、幸運にも参加できたことはラッキーでした。

ツアーでなくても、個人で訪れても同様の体験ができそうなので、当日の行程やこぼれ話を記録しておきます。

・まち並みガイドツアー
ガイドさんの解説をレシーバーで聞きながら、青梅駅から青梅織物工業協同組合までの道のりを散策しました。
青梅駅の南側、旧青梅街道には、昭和レトロな映画看板が溶け込んだ味わいある街並みが続きます。なかでも、「昭和レトロ3館」と呼ばれる、「赤塚不二夫会館」「昭和レトロ商品博物館」「昭和幻燈館」は、懐かしい気分に浸れるミュージアムとして、ファンにはたまらないスポットでしょう。


ダルマ市や近頃はマルシェなどで賑わう住吉神社。


少し路地に入ると、青梅宿の名残が感じられる小道や建物にも出会えます。


数年前から一般公開されるようになった、津雲邸。青梅市出身の元衆議院議員、津雲國利の邸宅だった頃は、当時の著名な政治家も訪れていたそうです。現在は、常設展示のほか、雛祭り展、幕末維新展などの特別展が開催されます。

写真を撮りそびれてしまいましたが、道中にはノコギリ屋根の建物がポツポツと残っています。均質な自然光が得られ、内部に広い空間を確保できるノコギリ屋根は、織物工場などに採用されてきたそうです。

・青梅織物工業協同組合(ORIC123)見学
ノスタルジックな駅前から少し歩みを進めると、青梅織物工業協同組合(ORIC123)に到着。そばには、かつて青梅の織物の中核を担ってきた建物が何棟も並んでいます。いずれも建設時期は昭和初期。現在はリノベーションされてアトリエやイベントスペースとして活用されています。
この日は、モニターツアーということもあり、建物内には、青梅の織物の歴史を辿れる展示が行われていました。

実際に、織体験をすることもできました。初めてでしたので、縦横の順に糸をピンと通していくだけでも一苦労でした。何度かやるうちに少しずつ綺麗に織れるようになりました。

江戸〜明治中期まで盛んに織られた「青梅縞」。経糸(絹と綿)と緯糸(綿)を組み合わせた藍染の縞柄は、江戸庶民に支持を得たそうです。その後、明治後期になると、黄色やオレンジなどの色鮮やかな寝具「青梅夜具地」が盛んに織られ、昭和中期には日本各地で使われるように。全国シェアが6割を超えていたという説もあります。
全国への浸透はもちろん、戦後の衣料不足や朝鮮戦争特需などの時代背景もあり、昭和20〜30年ごろの青梅は、織機が「ガチャ」と動くたびに万札が飛び込んでくるような好況「ガチャマン景気」に沸いたそうです。


織物の一大産地として栄えた青梅でしたが、生活の洋風化や新繊維の実用化など、さまざまな要因から、タオル生産に注目が集まるようになり、徐々に切り替わっていったようです。現在は「ホットマン株式会社」を中心に、青梅はタオル生産地のひとつとして知られるようになりました。ちなみに、タオルの三大産地は、今治(愛媛)、泉州(大阪)、三重北部だそうです。

一方、青梅夜具地は平成11年には生産が終了し、現在は、若手クリエーターを中心に青梅の織物の歴史を取り入れた、新たな織物文化創造への挑戦がはじまっています。

・石蔵レストランでランチ
青梅の織物文化を駆け足で追いかけた後、大正末期に建てられた石蔵をリノベーションしたオーガニックレストラン「繭蔵」でランチをいただきました。
野菜中心の優しい味付けの料理を楽しみました。

・雪おんな発祥の地!?
腹ごしらえをした後は、お待ちかねの染色体験の会場「壺草苑」に向けて歩きました。少し長い道のりでしたが、途中には「雪おんな発祥の地」の碑などの見所もありました。


・天然藍染に挑戦
大正8年創業の村田染工が平成元年にスタートした染色体験工房「壺草苑」に到着。「天然灰汁発酵建」と呼ばれる、昔ながらの技法を採用した工房です。
工房の傍には、物干し竿に干された作業途中であろう商品が風になびいていました。工房の中に入ると、やや嗅ぎ慣れない藍の匂いが立ちこめており、最初のうちは少しクラクラしてしまいました。
早速、職人の皆さんから染め方を習いました。今回はハンドタオルに自分の好きな柄を施して染めていきます。ゴムやビニール紐で、グラデーションや絞り柄をつける場所を縛ります。その後、手袋をして深い釜に入った藍に浸します。この工程を何度か繰り返すうちに、徐々に藍色に染まってきました。

体験ということもあり手袋をしての作業でしたが、職人さんは素手で作業をされています。藍は天然素材で環境にも人にも害はありませんが、1日に何度も染める作業をする職人さんたちの手には、藍色が染み付いています。何日間か作業をしなければ、天然素材なのでもちろん色は落ちるそうですが、基本的には手は藍色のまま。なかには女性の職人さんもいらっしゃいましたが、職人さんというのは、あらゆる点で肝が座っているなと、尊敬しました。藍染職人さんの裏側を少し知った気がします。

染めたタオルは持ち帰り、一晩、真水につけて完成。翌日、水気を絞り、乾かしてみると、予想以上に素敵な1枚に仕上がっていました。


・タオル工場見学&お買い物
最後に、壺草苑の向かいにある、現在の青梅のタオル生産を牽引する「ホットマン株式会社」へ。入り口ではゆるキャラ?が迎えてくれました。ここでは、青梅でのタオル生産の歴史やタオル市況などのレクチャーを受けた後、工場見学をしました。
「シェニール織」を手がける熟練職人の作業の様子や高速で回転するタオル織機を間近で見ることができました。
工場のそばには直販店があるので、今まで知らなかったタオルの歴史や製造過程に思いを馳せながら買い物ができます。直販店では、定期的にアウトレットセールをやっているようで、今回はたまたまその日にあたり、大きめのバスタオルをかなり手頃な価格で購入し、ツアーを終えました。タオルは実際に使用していますが、吸収力抜群です。

時間があれば、青梅駅周辺からゆっくり回るのもオススメですし、自分の興味があるところだけピンポイントに行くことも可能です。壺草苑とホットマンは歩くとやや時間がかかりますが、青梅駅や河辺駅から路線バス(青20、梅77乙系)も利用できるので、ぜひ足を運んでみてください。